転職や就職活動中の方々にとっては、企業が適性検査で受検者の何を調べて、そしてそのデータを選考等にどう利用しているのか、気になるところですよね。
人材コンサルタント、ならびに企業内人事の経験を活かし、「企業側は適性検査をどう見ているのか」について、就転職活動中の方々にわかりやすいよう、ざっとまとめてみます。
是非参考にしてみてください。
1. 適性検査とは
1-1 適性検査の内容・構成
適性検査は、一般的に大きく2つの分野の検査から構成されています。
1つは「Personality」を測るもの、もう1つは「基礎学力」を測るものです。
いずれも、何か特殊な能力を調べているわけではなく、受検者の「素材」を調べている、と言えば理解しやすいですかね。
1-2 Personality Test
文字通り、パーソナリティ診断です。
各適性検査によって、まとめ方や診断項目が若干異なるところはあるものの、例えば、次のような点を測っています。
リスト表示されているいずれの項目も高低(強弱)の度合いで判定されるため、傾向が測定される感じです。
後ほど詳述しますが、企業によって、また職種によって、重視する、される項目も異なるため、一律的にこの項目の数値が高ければ、絶対的に良い、という項目は基本的にはありません。
- 客観的に物事を考えるタイプか
- フットワークが軽いタイプか
- 感情で行動するタイプか
- 継続的に努力できる粘り強いタイプか
- 規則をまもっていくタイプか、自由奔放なタイプか
- 積極的に競争していくタイプか
- 自尊心が高いタイプか
- 慎重なタイプか、着手が早いタイプか
- 協調性
- 責任感
- 指導性
- 共感性
- 感情安定性
- 自主性
- 達成欲求
- 自律欲求
- 求知欲求
- 欲求
- 親和欲求
- 人と接することに対するストレスに強いかどうか
- 目標が設定されることに対してどれくらいストレスを感じるかどうか
- 忙しさに対してストレスをどれくらい感じるかどうか
パーソナリティ診断は、個人に関する様々な因子を調べ、その因子の組み合わせで、「チームで働く力」であったり、「アクション力」であったり、いろいろな人物特性を診断しています。
また、自分自身の特性を自分自身でしっかり把握しているか、自己認識にずれはないか、そんいった項目もあったりします。
1-3 基礎学力検査
業務を進めていくうえでは、物事を順番に理解する力であるとか、一定の数値計算する力があった方が、業務に要する時間も少なくなりますし、業務上のやりとりでもお互いが「楽」ですよね。そのための基礎学力検査です。
適性検査の種類によっては、時事問題や、英語の試験があるものもあります。
業務を円滑に進めるためには、最低限、現在に対する知識や英語力があったほうがいいという考えによるものだと思います。
まとめてみると、基礎学力検査では、適性検査によって若干異なるとは思いますが、概ね、次の項目を判定していると考えておけばいいでしょう。
- 論理的思考力
- 形態知覚力・空間認識力(図形)
- 数理
- 言語能力
- 時事問題
- 英語
1-4 適性検査の種類
適性検査の種類はとても多く、新卒採用、中途採用、更に中堅以上の中途採用などで実施する適性検査を変えている企業もあります。採用(新卒・中途)でよく使用される適性検査をいくつか記載しておきます。
適性検査名 | 販売・提供会社等 |
・SPI3 ・NMAT ※ |
株式会社リクルートマネージメントソリューションズ |
・玉手箱 ・OPQ ・GAB ・CAB ・羅針盤 ※ |
日本エス・エイチ・エル株式会社 |
・CUBIC | 株式会社CUBIC |
※基本的には社内昇進・昇格で用いられることが多いですが、中堅の中途採用位から使用されることがあります。
2. 適性検査の何を見ているのか
2-1 企業が見ているのはざっとこんなところ
各企業によって、適性検査で確認している事項、重視している事項は異なりますが、若手の採用では一般的に次の点を確認しています。
- メンタルヘルス不調に陥らないか 自社の組織特性と、個人の対人や繁忙などさまざまなプレッシャーやストレスへの耐性がマッチしているか確認しています。
- 職務適性 本人が希望する職務(研究・開発・営業など)と、本人のパーソナリティがマッチしているか、自社で適している職務は何があるかを確認しています。このデータは、配属先決定にも利用される場合があります。
- 社内で活躍できるタイプか 会社によっては、組織分析で、社内にいる現在の社員全員に適性検査、または類似の検査を行い、社内で評価されている層の特性を算出しています。そして、その特性を持ち合わせたタイプの採用を多くするよう試みている企業もあります。
近年、労働者のメンタルヘルス不調による休職者数は増加傾向であり、厚生労働省が取りまとめている平成29年「労働衛生安全調査(実態調査)」〔平成30(2018)年8月28日公表〕によると、全産業平均で、連続1か月以上休業した労働者は全体の0.4%、退職した労働者は同0.3%、合計で0.7%になります。決して少なくない数の人々がメンタル不調に陥っていることになります。
一般的に働きやすい環境であると言われている会社もそうでない会社も、社会全体でメンタル不調者が増加していることから、自社の現状とのマッチングを重視する傾向にあります。
話は少しそれますが、勿論、専門能力が必要な職種・職務になれば、 適性検査だけではなく、 新卒採用では学校での成績や研究実績・内容(場合によっては、専門分野の筆記試験も実施)によって、中途採用であれば前職での実績(経験内容)という形で、専門能力を確認することになります。
尚、新卒採用の場合、余程の専門性が必要な分野(例えば基礎研究分野等)を除いては、学生さんが思っているほど学生時代の研究内容にこだわっていない場合もあります。同じ学科系統であれば、全く問題ない場合も多々ありますので、そういった点は各企業に確認してみるといいでしょう。
3. 適性検査対策について
3-1 適性検査の対策はどこまですべきか
適性検査対策について、私見を記載します。
以上見てきたように、適性検査=「パーソナリティ診断+基礎学力検査」です。
パーソナリティ診断と基礎学力検査にわけて考えていきましょう。
3-1-1 Personality Test対策
自分自身が、現時点で志望している企業があったとしても、その企業がマッチするとしているパーソナリティの基準(詳細)は外部からではわかりません。また、仮にわかったところで、自身のパーソナリティを短期的に変えることはできません。
ですから、結論からお伝えすると、パーソナリティ診断の対策については、制限時間内に回答を完了させるための要領をつかんでおく程度でいいと思います。
尚、設問を回答している時に、企業がこういった回答をする人物を求めているのではないか?と思うこともあると思いますが、自分自身に当てはまらない恣意的な回答はお勧めしません。
多くのパーソナリティ診断では、回答に矛盾があるかないか、恣意的な回答をしていないかを確認できるような設問設定もされており、回答全般の信頼性(高低)を出しています。
信頼性が低いと、企業側からみた評価はあがることはありませんし、判定不能の回答をしたとして、次のステップに進めない場合もあり得ます。
仮に万が一、恣意的な回答をして上手く行ったとしても、本来の自分はその企業にマッチするわけではないので、入社してからが大変です(回答の信頼性があがらないので、恣意的な回答を積み重ねて上手く行くことは非常に稀だと認識しておいた方がいいです)。
恣意的な回答をして、逆に上手くいかなかった場合は、後悔することになりかねませんし、ありのままの自分の結果であれば、まだ納得しやすいと思います。
シンプルに、ありのままの自分を診断結果に出すよう心掛けた方がいいと思います。
3-1-2 基礎学力検査対策
「正解がある」テストなので、しっかり対策はしておくといいでしょう。
事前に対策をして、慣れておくのとおかないのでは、得点が大きく変わることも多いと思います。
もっとも、一般的に基礎学力検査ではものすごく難易度の高い問題が出るわけではないので、中学・高校位までに習ったことを思い出すこと、そして設問に慣れることが対策の中心になると思います。
3-2 適性検査対策は全種類行うのか
志望企業がどの適性検査を実施しているかは、新卒採用であれば、会社説明会で知ることができると思いますし、質問すれば教えてくれる会社が殆どです。中途採用の場合も人材紹介会社の担当者を通して知ることができるでしょう。「就職四季報(東洋経済新報社編)」に記載されている場合もあります。
志望企業それぞれの適性検査対策本等で対策(基礎学力検査は解き方及び時間配分、パーソナリティ診断は時間配分)をしておくことが、最も望ましいです。
対策する時間が限られている方は、1種類の適性検査についてしっかり対策を行ったうえで、他の適性検査については、特別な違いがあるかないか(ある場合は、違いのある設問の解き方を確認)、そして、問題を解く量と制限時間をざっと確認しておくことで対処できると思います。
また、適性検査の中には、対策本が出ていないものもありますが、各適性検査は差異はあるものの、根本的にそこまで大きく違うことは少ないです。他の適性検査の対策をしっかりしておけば、充分に対応できると思います。自信をもって臨んでください。
自社とのマッチングを見ています。
- メンタル不調に陥らないか
- 職務適性
- 社内で活躍できるタイプか
- パーソナリティ診断 正解を求める診断ではないので、どういった設問のされ方がされているか把握、また、制限時間内での回答ペースを把握するよう事前対策する。
- 基礎学力検査 正解があるテストなので、回答ペースの把握だけでなく、正解の出し方を含め対策本等でしっかり対策をする。