就職活動では参加しなければいけないの?
インターンシップと聞いて、学生の皆さんには、どのようなイメージがわいてきますか?
近年、インターンシップと呼称されるものには、単位認定される就業体験プログラムから、実質的には採用広報としての会社説明会であったりするものなど様々です。
今回は、インターンシップと呼ばれるものを大まかに類型し、皆さんの就職活動にどの程度繋がっているのか、少しまとめてみます。
1. インターンシップとは(定義)
インターンシップについては、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省とりまとめ文書「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」〔平成9(1997)年9月18日策定、平成27(2015)年12月10日最終改訂〕において、「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」としてまとめられています。
大学等におけるインターンシシップ(以下「インターンシップ」という。)とは、一般的には、学生が企業等において実習・研修的な就業体験をする制度のことであるが、インターンシップが活発に行われているアメリカにおいては、大学のイニシアチブの有無、実施期間、実施形態等によってインターンシップと称するかどうかを区分する場合もあるとされている。
「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」〔文部科学省、厚生労働省、経済産業省:平成9(1997)年9月18日策定、平成27(2015)年12月10日最終改訂〕
一方、我が国においては、インターンシップについては、「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」として幅広くとらえられている。
2. インターンシップの種類
それでは、インターンシップには、どのようなものがあるのでしょうか。
実際に行われているインターンシップは多種多様な上、就職活動スケジュール等の影響もうけるため、年度によっても異なるので、インターンシップを分類するのは難しいのですが、おおよそ、次の表のとおり区分することができます。
・インターンシップの種類実習日数(実働) 〔期間〕 |
選考 度合 |
報酬 | 保険 加入 |
主な 実施時期 |
備考 |
1日 〔1日〕 |
弱 | 無 | 不要 | 8月~2月 | 業界・会社説明や工場見学的なものが多い。 よく耳にする1dayインターンシップ。 |
2~4日 〔2日~4日〕 |
中 | (無) | 要 | 8月~9月 2月 |
業界・会社説明+業務体験的なものが多い。 実習日数が多いほど業務体験が多くなる。 |
5~20日 〔1週~1ヶ月〕 |
強 | (無) | 要 | 8月~9月 (2月) |
|
週2日~ 〔2ヶ月以上〕 |
企業に よる |
有 | 労災 保険 |
随時 | アルバイト的な感じ。主にベンチャー、 スタートアップで増加傾向。 |
※上表はインターンシップの大まかな区分、類型であり、表にの区分に当てはまらないインターンシップもあります。
実習日数〔期間〕・内容
1日のいわゆる1dayインターンシップから、1ヶ月間に亘る本来的な意味での就業体験のもの、また、実践的に業務を行うアルバイト的なものまでさまざまです。
・1日〔1日〕
1日のものは、業界・会社説明に社員との座談会がついているものや、工場見学とセットになったもの、簡単なワークショップ形式のもの等ありますが、日数が1日(場合によっては実質半日)と時間が短いため、就業体験というよりは、「業界・会社・業務内容の理解を深める内容」と理解しておけばいいでしょう。
・5日~20日〔1週間~1ヶ月〕
一般的に、就業体験プログラムが組まれており、日数が長くなればなるほど、実際に企業で行われている業務に近い就業体験ができるようになっています。
単位認定については、後ほど単位認定の項で詳細を説明しますが、5日以上のインターンシップは、学校で単位認定されるものもあります。また、インターンシップ参加のための選考があるものが多いです。
・2日~4日〔2~4日〕
1dayインターンシップと5日以上のインターンシップの中間のものです。1dayだと就業体験とみなされにくくなりやすいが、5日以上だと社内負荷が重い、また、学生もインターンシップについては、短い期間を好む学生が多い(*1)、という理由で導入している企業もあります。
以上のインターンシップは、 採用プロセスに直結していない場合も、 採用活動を意識した「企業PR・企業の魅力発信」を目的の一つとして実施されることが多いです(*2)。
更に、採用広報活動解禁日前の3ヶ月程度以内(特に1ヶ月前以内)に行われるインターンシップへの参加で、解禁後の会社説明会への参加を免除している等の企業もあります。
・週2日~〔2ヶ月以上〕
長期間にわたって行うもの。有償(報酬あり)で行うものも多く、アルバイト的な感もありますが、正規社員と同等の業務を行う点と募集対象が学生に限定されている点が異なる。案件数としては、そこまで多くはないです。
*1 最も参加しやすいと思うインターンシップの期間
「1日」53.8%、「2~3日」33.8%
〔2018年度 マイナビ大学生インターンシップ調査 集計報告 ㈱マイナビ〕
*2 インターンシップ実施目的
「仕事を通じて、学生に自社を含め、業界・仕事の理解を促進させる」88.2%
「採用を意識し学生のスキルを見極める」42.5%
〔就職白書2019 ㈱リクルートキャリア 就職みらい研究所〕
対象学年(応募可能者)
企業がインターンシップ情報サイト(就職情報Webサイトのプレサイト)や、企業独自のインターンシップサイトから告知・募集するインターンシップについては、 理系や文系、学部、学科、専攻等の系統別に応募対象者が絞られていることはありますが、対象学年は就職活動対象学年に限定せずに、全学年から応募が可能な場合が多いです(*3)。
但し、受入れ枠数の関係もあり、実際の受入れにあたっては、企業側が学年も考慮して書類選考等している場合もあります。
また、学校が応募窓口となっているインターンシップ(ジェネラルインターンシップ等)は、学校側が応募対象学年を規定しています。学部3年、修士1年に限定している学校が多いように思います。
*3 2020年入社者の採用選考まで企業の採用選考活動の指針となっていた「採用選考に関する指針」の手引き(一般社団法人日本経済団体連合会)では、広報活動解禁日前に実施するインターンシップについて、「大学のカリキュラム上、特定の年次に行う必要がある場合を除き、募集対象を学部3年/修士1年次の学生に限定せず、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある。」と規定されていた。
参加への選考度合
採用活動を意識して行われているインターンシップでは、実習日数が多くなるに従って、インターンシップに参加するための選考度合いが強くなる傾向があります。
1dayインターンシップへの参加のための選考はあまり聞いたことがありません(*4)が、2週間以上のインターンシップになると、インターンシップの選考試験として面接を設定している企業も増えてきます。
*4 選考していない場合も、人気企業では受入れ枠数が上限に達して、参加予約ができないことがあります。
報酬
日本で実施されているインターンシップは、現状、その殆どが「無報酬」です。但し、学生さんの費用負担軽減のため、1週間~1ヶ月のインターンシップでは、一般的に交通費や宿泊費は支給(もしくは企業側が自社持ちで手配)されることが多く、更に昼食代や日当として1日1,000円程度を支給している企業もあります。2日~4日のインターンシップでもほぼ同様です。
1dayインターンシップの場合は交通費は支給されず、学生さん負担となっていることが多いです。
保険加入
1dayインターンシップを除き、保険加入を必須としていることが多いです。必須の保険を傷害保険(ケガを対象とした保険)に限っている企業と、傷害保険に加えて賠償保険の加入も必須としている企業もあります。
加入手続きについては、企業側が手続きを進めてくれるところもあれば、学生さんが各自で加入手続きする企業等あります。
保険費用に関しても、企業負担となっていたり、学生負担となっていたり様々です。
尚、保険については、 単位認定されないインターンシップについても適用範囲とされる保険もあれば、参加するインターンシップが単位認定される「正課」の場合のみに適用される保険もありますので、学生さん個々が加入手続きを行う場合、保障内容をしっかり確認するといいでしょう。
実施時期
一般的に各インターンシップは年度の7月くらいから行われていますが、1dayインターンシップについては、8月と12月~2月が多く、その中でも2月は特に多くなっています。実習日数が複数日のものは、8月~9月が多くなっています(*5)。
ただ、実施時期は採用に関する解禁日等のスケジュールや主要就職情報サイト・インターンシップ情報サイトのオープン時期、時流の影響を受けるので、毎年一定のものではありません。毎年確認する必要があります。
*5 インターンシップに関する調査〔キャリタス就活2020学生モニター調査結果(2019年4月発行):株式会社ディスコ〕よりの推計、並びに自身の経験より
単位認定
5日以上のインターンシップの場合には、単位認定されるインターンシップとなる可能性があります(*6)。単位認定に必要なインターンシップ要件は、実習日数の他にもいろいろありますし、期間についての要件も実習日数を10日以上としている学校もあります。単位認定については、各要件は各大学・各学校ごとに異なっていますので、事前に学校に確認しておくといいでしょう。
*6 「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」に係る留意点について〔文部科学省・厚生労働省・経済産業省:平成29(2017)年10月25日〕において、インターンシップを正規の教育課程に位置付ける場合には、5日以上の実習期間の担保が求められています。
応募経路
学校経由で申し込みをするものと、各人でインターンシップサイト(就職情報サイトのプレサイトや企業のホームページ)から企業に直接申し込みをするものがあります。
3. 参加は必須?
就職活動という観点で必須かどうか、との質問に対しては、判断は非常に難しいですが、結論からお伝えすると、「必須とは限らないが、参加しておいた方がいい」です。
これは、広報解禁後に会社説明会を実施している企業はまだ多く、インターンシップに参加していない学生さんが、広報解禁(3月1日)後の会社説明会から選考にすすむことができるようにしている企業も多い(*7)のですが、インターンシップに参加しておけば、就職情報サイトのプレエントリーやセミナーの案内が企業側から行われることも多く、毎年変化し続ける企業側の採用活動に関する情報を得やすくなります。また、広報解禁後に採用活動(就職活動)プロセスとして実施されている会社説明会への参加が免除されたり、早期選考の案内を行ったりする企業もあるので、学生さんにとってはメリットが多いからです(*8)。
また、2020年採用では、約30%~40%の企業が3月を「面接」の開始予定月としていました(*9)。面接までの一般的なプロセスが、会社説明会→エントリーシート提出→適性検査→面接であるので、時間的・日程的に考えると、 広報解禁後の会社説明会・セミナーは、 企業探し・企業研究というよりは、「受験手続」と認識しておいたほうが間違いがなく、インターンシップに参加する等して企業研究を行い、遅くとも2月末までには受験企業をほぼ決めておいたほうが無難です。
*7 2020年卒採用に関する自社説明会・セミナーの開始予定月(対面)を3月としている企業は全体の70.1%〔就職白書2019 ㈱リクルートキャリア 就職みらい研究所〕。
*8
<参加後のアプローチや優遇>
エントリー(プレエントリー)の案内 31.4%
インターン参加者限定セミナーの案内 30.7%
早期選考の案内 28.6%
リクルーターからの接触 8.1%
筆記試験や選考(回数)の免除 8.1%
セミナー・説明会参加の免除 7.5%
採用直結(内定獲得) 1.9%
その他 0.8%
特にない 29.2%
〔出展:2020年卒特別調査 インターンシップに関する調査 キャリスタ就活2020 学生モニター意識調査(2019年4月発行:株式会社ディスコ)〕
*9 28.2%〔就職白書2019:㈱リクルートキャリア 就職みらい研究所 〕、36.8%〔2020卒 マイナビ企業新卒採用予定調査:株式会社マイナビ〕
4. インターンシップを有効に活用する
既にお話ししましたが、5日以上のインターンシップは就業体験的なもの(参加のための選考あり)、1dayインターンシップは就業体験というよりは、実質的には業界・仕事・会社説明会的なもの(参加のための選考があるものは少ない)が多いです。
インターンシップに参加すれば、人々は企業の中でどのように働いているのか、企業社会とは何か、そして個別の企業についての知見を得られますし(限界はありますが)、仕事について、就職について、また、起業等で企業に就職しないことも含め、進路について考えるためのいい機会になると思います。
年度によっても、また個別の企業によっても異なるので、動向等に注視する必要はありますが、一般的に10月くらいまでのインターンシップについては、企業側は採用広報は強く意識していても、採用プロセスそのもの、という感覚が強いわけではないので(特に1day)、企業見学、社会勉強に行くつもりで、参加してみるといいと思います。
11月~12月には、企業側も、より採用を意識したモードに変化していきます。インターンシップとは別に学内外の業界研究セミナーも多くなってきます。慌てる必要はないと思いますが、学内外セミナーで「就職活動のための企業調べ」、「受験先を決定するための企業研究」を行い、学事日程の妨げにならない範囲で、必要に応じて、インターンシップに参加していくといでしょう。
そして、2月には、多くの企業担当者は採用活動モードになっています。この時期のインターンシップは、広報解禁後の採用プロセスでの実質的に採用活動(就職活動)に関係していることもあり得ます。情報収集も含めて受験予定企業のインターンシップがあれば、2月迄に1度は参加しておくといいと思います。
尚、広報解禁日(3月1日) 前のインターンシップ、学内外セミナーなどで、企業担当者に実質的な採用プロセス・必須参加イベント・時期について確認しておくといいでしょう。広報解禁前のセミナーでは、募集要領の説明は原則不可なので、企業担当者からは伝えづらい場合もあるのですが、学生さんが質問すれば、大まかには話をしてくれると思います。
5. 最後に
採用市場動向は、年度によって大きく変化することもあります。焦ったりする必要はないですが、情報収集は自らの責任で確実に行っておく必要があります。
特に近年は、広報解禁日から、実質的な採用内定まで短期間で行われる傾向が強く、解禁日以降少しボーっとしていると、出遅れてしまうことになりかねません。
採用市場動向の情報収集という観点からもインターンシップへの参加は有益ですし、「働くということに対して」「企業社会について」「個別の企業について」等々、少し長い期間をもって、自身の考えを着実に養っていくためにもインターンシップへの参加は役立ちます。
就職活動という意識でインターンシップに参加する必要がある場合もあるかもしれませんが、そういった意識ばかりではなく「働くことについて考える機会」として、学事日程の妨げにならない範囲で、早い段階からインターンシップを上手に活用してみてはいかがでしょうか。