会社について、何をしらべればいいいの? 

新卒採用で就職活動中の学生さんや、社会人経験がまだまだ浅い方々の中には、企業調べは、何をどう調べればいいのか、また、会社について調べたが、実感としてどうとらえていいのかわからない、という方もいらしゃると思います。

私自身、人材マーケットを通して多くの会社と接してきましたが、「自分自身がお客として商品・サービスを購入するにはフィットするが、内側で働くには自分には向いていないな」と感じる会社や、その逆もあったりと、内側からと外側から等の視点によっても、会社のイメージは異なりますよね。

社会人経験が浅いと、外側の視点からの企業イメージはそれなりに蓄積されていても、働く側として、実際にその企業で自身が働いているイメージを持ち辛いこともあると思います。

そこで、本日は、まだ社会人経験が浅い転職をお考えの方と学生さん向けに、私が人材会社で多くの企業と接してきた経験と、実際に企業人事としてデータを集計・提供してきた側としての経験をもとに、「働く側として」企業データをどう調べ、見ていったらいいのかについて、少しお話します。

1. 企業研究

1-1 ビジネス界の状況を知る

月並みですが、やはり、世の中にどんな業界が、会社があるのか、なんとなくでもいいので、まずは一通りざっと見てみるといいと思います。

やりたいことが明確に決まっている人にとっては、自身の方向性の確認にもなりますし、ビジネス界全般の勉強にもなります。
面接では、その人の背負っているもの、背景や何かを学んできた経験値が、どうしても出るので、マナー等を除いては、あまり即効性のある対策はないです。 普段からの少しずつの蓄積が大切です。

また、やりたいことが決まってない人にとっては、どんな業界、会社があるのかを知ることによって、自身の選択肢を考えていく第一歩になります。

全体を俯瞰する目的であれば、良く出回っている業界研究本で充分だと思います。

ビジネス界全体俯瞰のための本(例)

■「会社四季報」業界地図
■日経 業界地図

ざっとでいいので、見ておくポイント
・どういった業界、どういった企業があるか。


こんな点も少し確認しておきましょう
・業界ごとの市場規模(売上)も見ておくと、業界ごとの特徴、一般的な傾向の把握にも役立ちます。
・企業グループ関係(資本関係)も少し見ておくといいでしょう。


1-2 業界・企業の具体的データを見る

ざっと全体を把握できたら、もう少し詳細な数値を見ていきましょう。企業データが掲載されている出版物、記事はいろいろあります。

業界・企業の具体的データが掲載されている本(例)

■就職四季報

気になる企業や業界の数値をざっとみてみましょう。
私は、個別の企業毎に文化は異なるので、業界全般の傾向で個別の企業文化を決めつけるのは良くないと思っています。しかし、業界毎に一定の傾向も確かにあります。
個別の企業だけでなく、同業界の他の企業についてもざっと、データを見ていくと、働いている自分自身をイメージするのにきっと役立つでしょう。

ところで、多くの企業データが収録・掲載されている場合、読者からすると、編集者や出版社が企業の実態をゼロから調査し、実態と相違ないか検証して掲載しているように思うこともあるかもしれませんが、実際には、各企業が自社の数値を集計し、回答したデータをもとに、編集者(出版社)が各データを掲載しています。

ですから、掲載されているデータは、基本的に各企業が自社について自ら公表したデータとして受け止める必要があります。もっとも、全てのデータが企業提供データというわけではなく、先記の就職四季報で言うと、例えば、記者評価欄には企業は直接かかわっていません。

ある意味、当たり前ですが、企業の中には、少しでも見栄えのいい数字を掲載したいと思う会社もあります。また、母集団の範囲など、企業ごとに集計方法が異なる場合もあります。数字を見る場合には、注釈も意識しておくといいですね。

特に母集団によって、数値が大きく異なる場合もあります。会社全体なのか、総合職のみなのか、大卒系のみか、現業系を含んでいるのか、労働組合員(基本的に管理職を除く)だけのデータなのか、等々。

何か気になるデータがあるのであれば、是非、企業の採用担当者に上手く確認してみましょう。

確認しておこう
・有給休暇取得平均日数
・平均残業時間/月
・平均年収
・女性採用比率
・離職率

「有給休暇取得平均日数/年」
 管理職を含めないものと、管理職のデータを別々に知ることができると、より企業イメージがわきます。

「平均残業時間/月」
 残業時間は所定労働時間(1日7時間45分とか、8時間とか、企業によって異なる)超の時間を残業時間として記載している場合と、法定労働時間(8時間/日)超の時間を残業時間として集計、記載している場合等があり得ますので、残業時間というより、総労働時間で把握できれば、働いている自分をよりイメージしやすいかもしれません。
 また、管理職層には残業という概念がなく、基本的には集計対象外になっていると思いますので、管理職層が実態としてどれくらい働いているのか、についても確認しておくと、企業風土を理解する上で役立ちます。
 管理職と聞いて、自分自身にはまだまだ関係ない、と思っている方もいらしゃると思いますが、5年、10年、15年なんてあっという間です。自身に関係することだと思って、管理職層の総労働時間の把握もおすすめします。

「平均年収」
 総合職と一般職、現業系と非現業系等、給与制度がかなり異なる場合もあります。管理職を含めて数値を出している場合は高めに出ます。どういった母集団で、どういった集計方法のデータなのか、最終的な企業ごとの比較においては、そういった点も考慮するといいかもしれません。
 また、残業時間が短くなった場合は、その分年収が減少する可能性があります。残業時間(残業代)も考慮して数値を見ていく必要があります。
 学生の時はあまり実感がなくても、社会人になってしばらくしてから、学生時代の友人と話をして、「えっ!そんなに違うの?」と実感することもあるようなので、しっかり把握しておくといいでしょう。

「女性採用比率」
 一般的には、女性採用比率が低いと、企業体質が古い(いわゆる男性型社会)といわれる傾向があるようです。特に年功序列型の企業では、企業体質の変化には一般的に時間を要するので、直近の数値だけでなく、10年ほど前の数値を知ることができれば、変遷も含め、企業についてより理解できるのではないかと思います。
 企業側が10年ほど前の数値を持ち合わせていない場合は、現在の女性管理職比率(全管理職に占める女性の割合)について聞いてみるといいでしょう。
 女性採用を以前から普通に行ってきたのかどうか一般的には類推できます。

「3年後離職率」
 厚生労働省が毎年2回行っている「雇用動向調査」によると、2017年までの10年間、常用労働の一般労働者(パートタイム労働者を除く)の離職率は年11.3~12.9%で推移しています。
 また、厚生労働省がとりまとめている「新規学卒就職者の離職状況」によると、就職後3年以内離職率(大学卒)は2015年就職者までの10年間の数値が、28.8~34.2%で推移しています(就職後1年毎で換算すると9.6~11.4%に相当)。
 3年後離職率は採用時のミスマッチや働き辛さなどの負の問題がある一方で、積極的な企業風土改革(本人にも説明の上、積極的に従来と異なるタイプの人材を採用する等)や適度に緊張感のある職場環境づくりなど、企業側としての前向きな取組の結果である場合もあり、中長期的にみると、必ずしも0%に近ければ近いほど良いとは言い切れない場合もあると考えます(勿論高すぎもN.G.です)。
 また、採用人数にもよりますが、パーセント表示では、1人の離職で大きく数値が異なってくる場合もあります。
 以上のことも考慮すると、私は1桁から15%程度以内までで推移していれば、まずはそこまで気にしなくてもいい範囲内であると思います。
 (例)3.1%→15.0%→5.5%→2.6%→12.4%
 (例)20名採用の会社で、毎年1名辞め、3年後在籍者17名になっていた場合、3年後離職率は3人/20人=15%です。
 離職率を中長期でみると、企業風土(働く環境)の傾向はわかると思うので、その会社が自身にマッチしているかどうかを把握する上では、重要な指標の1つです。

こういった項目も確認してみよう
・配属先比率
・海外勤務者数(海外駐在者数)

「配属先比率」
 転職(中途採用)の方は応募時に既に当初の業務範囲が絞られている場合が多いので、会社の傾向としてとらえておく。
 専門知識があり、自身がやりたいことがある新卒採用の学生さんにとっては、希望する業務につける可能性は気になりますよね。
 選考過程で、配属先をほぼ決めて採用している会社もありますので、配属先比率を参考としながらも、配属可能性については、企業の担当者に聞いてみるといいでしょう。

「海外勤務者数」
 今の時代、1度は普通に海外で仕事をして暮らしてみたい、という方も多いと思います。
 販売先はグローバルでも、海外勤務者が少なかったりする場合も多々あるので、自身が志望する職種でのどれくらい海外で活躍できるフィールドがあるのか確認してみるといいでしょう。
 どういった業務に従事してる人が海外勤務しているのか、営業系が多いのか、技術系か、技術系の中でも開発系か? それとも海外工場で指導する作業系が多いのか? 合計人数だけではわからないことも多いので、企業側に是非確認してみてください。
 また、海外勤務(駐在)だけでなく、海外出張がどれくらいあるのかについて聞いてみるのも、将来的な自身のフィールドを把握することに役立つでしょう。

 ま と め 
・有給休暇取得平均日数
 管理職も含めたデータか否かを知ることができると、より企業風土が理解できる。
・残業時間/月
 残業時間より総労働時間がわかると、イメージしやすい。
・平均年収
 同質の仕事内容であれば、たくさんもらえた方がいいかも。同じような仕事でも、会社によって水準が大きく異なる場合も。
・女性採用比率
 女性採用比率が低いと体質が古い傾向があると一般的に言われます。
・3年後離職率
 パーセント表示なので、年によって大きく変動する可能性あり。
・配属先比率
 数値は企業の傾向としてとらえる。人数が少なくても、マッチしていれば配属される可能性が充分ある。
・海外勤務者数
 海外売上高比率が高い=海外で活躍できる可能性が高いということではないので、注意。実態を確認しましょう。

 ポイント 
  • 集計方法にも留意
    自分自身にどれぐらい直結するデータなのかを確認する。母集団は大卒系か?総合職、一般職含むのか?管理職はどうなのか?
  • 単年度の数字のみで判断しない
    一般的に企業文化の変化には時間を要します。項目によっては、直近だけでなく、10年ほど前のデータからの推移を確認する。
  • 上手に聞いてみる
    わからないことは、企業の担当者に「上手に」聞いてみる。聞き方によっては嫌がられる場合もあるので、ポイントポイントで、個別にさらっと聞いてみましょう。
    尚、一般論ですが、企業の担当者は企業から給与を得て広報していますので、多くの場合、マイナスの情報は積極的に伝えません。ただ、聞かれれば、答えてくれると思いますので、是非「上手に」聞いてみてください。

転職・就職希望先を決めるにあたっては、やりたいことができればいい!と、あまり、企業風土や給与条件等をあまり調べない方もいらしゃいます。その場合も、企業風土を知り、理解・納得した上で選択すればいいので、企業データについて一通り確認しておくといいのではないでしょうか。